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東日本大震災における震災関連死軽減に向けた歯科からのアプローチ

口腔衛生学 瀬川 洋 教授

研究内容

 2011(平成23)年3月11日に三陸沖を震源とする東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の地震動と津波の影響により、東京電力福島第一原子力発電所では炉心溶融(メルトダウン)など一連の 放射性物質の放出を伴った原子力事故が発生した。福島県民200万人のうち、2012(平成24)年 5月のピーク時には164,865人が県内外に避難していたが、2016(平成28)年1月に初めて10万人を下回り99,991人となり、事故から7年が経過した2018(平成30)年6月14日現在、33,622人が 避難生活を余儀なくされている。福島県の震災関連死認定者数は2015(平成27)年12月25日に2,000人を超え、2016(平成28)年3月31日現在、2,038人で、市町村別では南相馬市が489人と  最も多く、浪江町が384人、富岡町が339人など帰宅困難区域からの避難者に多い状況にある。 

 これまで福島県内の仮設住宅では居住する自治会による見回りや保健師による巡回保健指導や健康支援活動が行われてきたが、震災関連死の増加に歯止めが掛かっていない。被災者に対するメンタルヘルスケア、いわゆる「こころのケア」は一段と必要性を増している。福島県は2015(平成27)年度、仮設住宅などで避難者の相談に応じる生活支援相談員を現行の約200人から400人に倍増するとともに避難者のニーズや課題を集約し、解決策を提案する総括・主任相談員を5人登用した。このような中、口腔ケア推進プログラムを作成して、福島県歯科医師会を実施主体として、帰宅困難区域の仮設住宅入居者を対象に被災地口腔ケア推進事業を2013(平成25)年から 継続実施していて、2014(平成26)年度からは総務省福島行政事務所と連携して「歯の健康相談&行政困りごと相談」として実施した。総務省は避難生活の長期化などによるストレスが原因で 唾液の分泌量が減り、口腔内が乾燥している被災者が増加しているとの見解を示している。乾式臨床化学分析装置によるストレスの状況は経年的に低くなってきているが,口腔水分計による 口腔乾燥度の状況は依然高い状況にある。復興公営住宅の建設が進む中、仮設住宅の供与は1年ごとに延長が決まり、これまで3度延長されてきた。避難指示の解除の見通しや復興公営住宅の整備、自宅の建築・修繕等住居の確保が困難な一部の避難指示区域は2018(平成30)年3月末 まで延長となったが、その他の市町村・区域は2017平成29年3月末で供与期間を終了することになった。供与延長を避けられない入居者の中には家賃が無料であった仮設住宅から復興住宅に移ったことによる経済的な問題や団地形態の復興公営住宅の居住に不安を抱えるなど新たな  ストレスの要因も生じている。また、復興支援は加速化しているが、未だに原発事故による風評被害の払拭は困難な状況にある。このようなことから震災関連死の慧眼に向けた継続的な歯科 からのアプローチが望まれている。


今後の研究予定

帰宅困難地域の仮設住宅の閉鎖に伴い、復興公営住宅入居者を対象に口腔ケアに関わる支援を行い、得られた結果を解析して公表すると共に災害歯科医学教育に取り入れていきたい。



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