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補綴装置装着と咀嚼能力に関する研究

歯科補綴学講座 羽鳥 弘毅 教授

研究内容

 平成295月に,有床義歯咀嚼機能検査(以下:検査)の本格運用を開始し現在に至る.全部床義歯装着患者における本検査の状況と、術前・術後のグミ咀嚼試験(以下:グミ試験)の評価について報告します.平成295月から令和28月までに,上下顎全部床義歯を装着(以下:術後)した患者のうち,術前15名について,性別,年齢(術前検査日の実年齢),習慣性咀嚼側,グミ摂取経験の有無について調査した.また,術後検査を実施した患者について,検査回数および内訳,術後の最初の検査までの調整回数および日数等について調査した.さらに,術前および術後1回目のグミ咀嚼スコアを比較し評価した.統計にはWilcoxon順位和検定(p=0.05)を用いた.術前検査を実施した患者15名のうち,術後検査を実施した患者は12名であった.術後検査が未実施の3名は全て,実施前に未通院となっていた.この理由としては,義歯調整のみである全部床義歯の症例の特殊性が反映されているものと考えられた.患者15名の平均年齢は74.4±5.8歳で,習慣性咀嚼側は右:左=8:7で,男女比は男:女=6:9であった.グミ咀嚼経験の有無は有:無=4:11であり,経験がない患者が多かったが,これは患者が上下全部床義歯装着患者であり,日常的にグミ咀嚼経験をする環境にないこと,平均年齢が高かったことも反映されていると考えられた.術後の検査を行った患者の平均検査回数は1.13/人であり,内訳は顎機能検査およびグミ咀嚼試験が15回、グミ試験のみが2回であった.また、術後検査までの期間は平均5.4週であった.我々はこれまで,本検査の今後の課題として,複数回の実施による評価の必要性と,術後1回目までの期間の短縮を報告してきたが,全部床義歯の場合でも課題として挙げられる.グミ試験では,術後に咀嚼スコアの平均値が増加する傾向が認められたが,有意差は認められなかった.


今後の研究予定

  義歯直後には咀嚼能力は低下する傾向があることが報告されている.本研究では、平均1ヵ月近く調整を要したため、順応期間が確保されたため,異なる傾向となった可能性が考えられた.しかしながら,患者ごとの調整期間には幅があるため,今後は症例数を増やし,調整期間ごとに分けたグループでの検討も必要と思われた.また,術後の複数回の実施による長期的観察を行うとともに,症例数を増やし,年齢,性別,グミ咀嚼経験の有無,調整期間の違いが咀嚼スコアに与える影響について検討していく必要があると考える.


講座紹介

歯科補綴学講座 冠橋義歯学 


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