研究紹介

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研究紹介

有機触媒を用いた電気化学分析によるアセチルコリンエステラーゼ活性測定

2025.10.06

薬学部 生命物理化学
准教授 小野哲也

[研究の背景と目的]
様々な物質の濃度を測定することができる電気化学センサーは安価で容易に計測が可能であり、血糖値を測定するグルコースセンサーに代表されるように医療を始めとした様々な分野で利用されています。しかしながら、電気化学的活性をもつ化合物を標的とする必要があるために適用範囲に限りがあることや、複数の過程を経る必要があることなどの課題もあります。このような背景の中、私たちの研究室ではノルトロピン型ニトロキシルラジカル(NNO)を利用した電気化学分析について検討しており、様々な医薬品や生体関連物質の定量が可能であることを明らかにしてきました。この分析手法は、主に有機合成分野で利用されている有機触媒であるニトロキシルラジカル化合物を電気化学分析に応用するという新しい原理に基づくものであり、様々な化合物に適用可能である手法です。そこで本研究では、このNNOを利用した電気化学分析を酵素反応の基質や生成物の選択的定量および酵素活性測定に応用することを目的として、代表的な生体内酵素の一つであるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)とその基質であるアセチルコリン、酵素反応生成物であるコリンをそれぞれ用いて検討を行いました。
 
[主な成果と意義]
NNOがコリンの電気化学的酸化を促進することを確認され、この特性を利用してAChEによるアセチルコリンの加水分解反応の進行をリアルタイムでモニタリングすることが可能であることを示しました。また、AChEの活性を変化させた測定においては、電流値がAChE活性に依存して増加することから、本手法は広範囲のAChE活性測定に有用であることが示されました。従来のAChE活性測定法では比色法や蛍光法が主に用いられていましたが、本手法は電気化学的な計測によって簡便かつ迅速にAChE活性を評価できるという利点を持ちます。血清コリンエステラーゼ測定は肝や心臓疾患などの診断に、また、AChE測定は神経毒性評価やアルツハイマー病などの神経疾患診断などに利用されており、本研究成果は様々な用途への応用が想定されます。
 
[今後の展開や展望]
今回構築した手法は有機触媒と電気化学分析を組み合わせた新たな分析手法であり、臨床検査などでの実用化が期待されます。また、この分析手法はヒドロキシ基やアミノ基などの官能基変換を伴う様々な酵素反応に応用が可能であることから、医療のみならず工業や食品化学などの様々な分野での応用、発展が期待されます。
 
[参考論文]
研究の内容は、次の論文に掲載されています。
Measurement of acetylcholinesterase activity by electrochemical analysis method utilizing organocatalytic reactions, RSC Adv. 2025, 15, 32464-32469. doi: 10.1039/d5ra04585a.



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