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研究紹介

恒常的アンドロスタン受容体リガンド(CAR)によるマウスCyp1a2遺伝子活性化に関わるCAR応答配列の解析

2025.07.18

薬学部 衛生薬学
佐久間 勉

[研究の背景と目的]
CYP1A2は肝臓での薬物の解毒反応を担う重要な酵素です。その活性は細胞が薬物に曝されると強くなります。この様な現象を『酵素誘導』といい生体防衛システムの一つですが、薬と薬の飲み合わせで生じる問題の原因でもあります。その調節機構は、動物種間、例えばヒトとマウスの間でも違う可能性があります。新たな薬を開発する際、ヒトで使用する前に実験動物を用いた試験によって安全性を確かめます。
しかし動物での試験で酵素誘導が観察されても、その現象がヒトでも起こるか否かを判断するには、ヒトと実験動物の間での酵素誘導メカニズムの類似点と相違点が明確になっている必要があります。本研究はマウスのCyp1a2遺伝子の調節機構を解析し、ヒトのCYP1A2遺伝子との類似性を明らかにすることを目的としました。

[主な成果と意義]
CYP1A2はフェノバルビタール(睡眠薬)に曝されることによって活性が強くなりますが、それは遺伝子が活性化するためです。その際、細胞の中では恒常的アンドロスタン受容体(CAR)という因子がフェノバルビタールによって活性化され、それがCYP1A2遺伝子の調節部位に結合することにより遺伝子の活性化が起こります。今回マウスCyp1a2遺伝子の調節部位を解析した結果、ヒトCYP1A2遺伝子との類似点と相違点が明らかになりました。
ヒトとマウスのCYP1A2遺伝子は非常に似た構造(配列)をしています。これまでにヒトCYP1A2遺伝子にはCARが結合し活性化させるER8型結合配列が1カ所明らかになっておりました。今回マウスでは別の位置にCARが結合しCyp1a2遺伝子を活性化することを明らかにしました。また、その位置はヒトとマウスで配列が異なるため、ヒトのCYP1A2遺伝子ではCARが結合できず遺伝子の活性化も起こらないと推測されました。これが相違点と言えます。
しかしマウスで新たに発見されたCAR結合部位の配列はヒトCYP1A2遺伝子と同じER8型結合配列であったため、位置は異なりますがヒトと同様なメカニズムにより調節されることが推測されます。このことはマウスで観察されるCYP1A2の誘導現象がヒトでも起こり得ることを示すと同時に、CYP1A2誘導に関してマウスがヒトでの現象を予測するのに適した動物モデルである可能性を示しています。

[今後の展開や展望]
本研究ではCYP1A2遺伝子とCARの結合に焦点を当てマウスとヒトの類似性を明らかにした。一方でヒトのCARとマウスのCARでは、それらを活性化する物質(リガンド)に違いがあることも知られています。このCAR活性化の動物種差を解析し評価するシステムが構築できれば、より正確にマウスの実験結果からヒトでの影響を予測できるようになると考えます。

[参考論文]  
研究の内容は、次の論文に掲載されています。
Constitutive androstane receptor-response elements for mouse Cyp1a2 transcriptional activation induced by constitutive androstane receptor ligands. 
Drug Metabolism and Pharmacokinetics 48: 100485  2023年



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