薬学部
糖尿病薬にはどんなものがあるの?
衛藤 雅昭 教授
糖尿病は、インスリンという血糖を下げるホルモンの分泌が悪い、あるいはその働き(作用)が弱くなって、高血糖が持続する病気です。この結果、眼、腎臓、神経、心臓に重篤な合併症をもたらします。糖尿病薬は基本的には血糖を下げる薬で、7種類あります。
①インスリン-患者さんが毎日自己注射します。この管理・指導は薬剤師の重要な仕事の1つです。経口剤として以下5種類があります。②スルホニル尿素薬-膵臓を刺激してインスリンを分泌させる。③グリニド系薬-速攻型。④ビグアナイド薬-肝臓でのインスリンの効きをよくする。⑤αグルコシダーゼ阻害薬-小腸での糖の消化・吸収を遅らせる。⑥チアゾリジン薬-脂肪に作用してインスリンの効きをよくする。最近開発され脚光を浴びているのが、⑦インクレチン関連薬です。これは小腸細胞に作用してインクレチンという消化管ホルモンを分泌させ、血糖を下げる新薬です。トカゲ毒から抽出され、テレビでも紹介されました。糖尿病薬はこのように大変革期にあります。薬学部で臨床医学・薬理学を教え、かつ現役の糖尿病専門医である教員が解説します。
抗酸化物質のはたらき
上野 明道 教授
酸素は生命維持に必須であるが、酸素を用いてエネルギーを生産するとき、同時に活性酸素が発生し、生体分子と反応して損傷を与え、それらが蓄積して老化に寄与する。当然、細胞は活性酸素に対抗するシステムを備えている。ビタミンCとE、ナイアシン、グルタチオン、酸化ストレス感知システム、抗酸化酵素等が関与する。また、食品中にも数々の抗酸化物質が含まれていることが知られている。酸素・活性酸素の機能、活性酸素消去機構、サプリメントの作用について最新の話題を提供する。
高血圧とその治療薬について
髙田 芳伸 教授
現在、わが国には高血圧症患者は約4,000万人いるといわれています。高血圧症には特有な自覚症状がなく、それによって命を落とすことは殆どありません。しかし、高い血圧を長期間放置しておきますと、心筋梗塞、脳梗塞や腎不全などの致死的疾患を患うことになります。
高血圧症と診断された場合、先ず非薬物療法を行います。それでも効果がない場合には、薬によって血圧を下げます。非薬物療法と薬物療法について解説します。
私たちの生活と環境問題
押尾 茂 教授
環境問題の対象として、大気、水、室内環境、廃棄物などがあります。本講座では、それらに対する測定項目、方法、その意義などについて紹介するとともに、福島、日本、そして世界の環境の現状とそれに対する対応(解決)策を学びます。なお、一部の項目については、実際の測定器具を用いた実技を体験していただきます。
生命はどのようにつながっていくのか
押尾 茂 教授
生命の最も大事な営みに、次世代を作るというものがあります。英語ではこれを”reproduction”とよび、直訳すると「再生産」ということになりますが、学術用語では「生殖」といいます。本講座では、「生殖」について、性がなぜ分かれたのかということから、最新の生殖医学の現状までを紹介します。
私たちの生活と公衆衛生
押尾 茂 教授
皆さんは、「昨年は29秒に一人の赤ちゃんが生まれました」とか「45秒に一組が結婚し、2分6秒毎に離婚しています」というような記事を読んだことがありませんか。これらは国が毎年実施している人口動態統計という資料に基づいて発表されています。本講座では、わが国の公衆衛生の動きについて、公表資料を基にして、過去と現代を対比しながら説明します。
身の回りの化学:お茶を科学的に解明しよう
竹元 万壽美 教授
茶畑の茶葉にはアミノ酸、カテキン、ビタミンC、カフェイン、ミネラル、多糖類等と酵素が含まれています。この茶葉に日光が当たると、日光と酵素の働きで茶葉の成分は変化します。また、茶葉中の酵素の働かせ方の違いで緑茶や紅茶、ウーロン茶になり、生の茶葉には無い新しい成分が誕生します。そしてお茶を飲むと私たちの体は健康になります。このようにお茶はとても不思議です。お茶の不思議を科学の力で解き明かしてみませんか。
薬の開発や使い方:グリーンケミストリーと医薬品
竹元 万壽美 教授
科学の世界は19世紀の初め一挙に活性化し医薬革命を生み抗生物質の誕生は多くの人命を救いました。しかし20世紀には限りある資源の急速な消費、医薬品を含めた化学物質の製造、使用、廃棄が人々の健康と地球環境を損ないました。グリーンケミストリーとは有害な物質の生成や使用をせず、環境への負荷を軽くした医薬品等の化学物質の製造法に必要な心構えを勉強する学問です。君もグリーンケミストリーの達人になりませんか。
感染症から身を守るには
堀江 均 教授
近年、人類が今までに経験したことがないような、新しい感染症が次々と出現しています。また、医学・薬学の進歩により制圧したと考えられていた感染症も、ほとんど全ての抗菌薬が効かない多剤耐性菌の出現によって、再び大きな問題となっています。これら感染症の現状を紹介するとともに、よく耳にする腸管出血性大腸菌O-157やH5N1高病原性トリインフルエンザウイルスなど、代表的な病原体の正体を分かりやすく解説します。更に、手洗いの効果や新型ワクチンの話題など、感染症予防につながる最新の情報を紹介します。
人間のからだにやさしいクスリ
柏木 良友 教授
従来の多くの投与法では、薬効を示すに必要な濃度を全身において維持するために、投与する薬物量が多くなり、副作用が生じてしまう。そこで体内に投与された薬物が、目的とする疾患部位のみに到達することが可能な投与法を開発し、副作用の少ない「人間のからだにやさしいクスリ」について紹介する。
かゆみのはなし
野島 浩史 教授
かゆみを感じるのはどんなときでしょうか。花粉が舞う季節になると目や鼻がかゆくなる。虫に刺されてかゆくなる。冬が近づいて空気が乾燥してくると背中や手足がカサカサしてかゆくなる。アトピーやじんましんなどの皮膚の病気や、肝臓や腎臓などの内臓の病気のひとでは全身がかゆくなります。そんなかゆみはどうして起きるのでしょうか。かゆみについて今わかっていること、未だわかっていないことをお話します。
文学者とくすりのはなし
早坂 正孝 教授
今でも、新しい薬が開発され、薬の進歩には著しいものがあります。でも、少し前までは、薬がないために、有名な文学者をはじめ多くの人々は、病気にたいへん苦しめられていました。もしも良い薬があったなら、文学者はさらに新しい文学作品を創ることが出来たかもしれません。薬を通して、病気と人生の中に垣間見えた文学者の人間模様をお話します。薬が如何に人々に貢献してきたか、分かっていただければ幸いです。
リンネとダーウィン:生き物を分けた人とつなげた人
大島 光宏 教授
リンネとダーウィンを知っていますか?リンネは、生き物を二命名法によって徹底的に分類しました。人類をホモ・サピエンスと命名するなど、「分類学の父」と呼ばれます。ダーウィンは、なぜ様々な生き物がいるのかを不思議に思い、自然選択説を唱えて生き物は進化すると発表しました。すべての生き物が共通の祖先から進化したと最初に考え、かつ証明しようとした人です。二人の足跡を辿り、私たちの未来を想像してみましょう。
神経幹細胞と脳の再生
小谷 政晴 教授
「脳は再生しない。」という1世紀にも及ぶ定説を覆す発見が、20世紀の終わりにありました。それは、脳の再生を支える“神経幹細胞”という細胞の科学的立証です。本講座は、“神経幹細胞”とはどのような細胞なのか、その細胞はES細胞、iPS細胞さらにSTAP細胞とどんな関係にあるのかなどについて解説します。最後に、神経幹細胞を用いる脳の再生医療の原理に触れ、今後の医療について一緒に考えたいと思います。
遺伝資源としての薬用植物
伊藤 徳家 准教授
日本は石油などのエネルギー資源を海外から輸入しているため、「石油ショック」に見舞われてしまいます。石油は大昔の植物が姿を変えたものですが、そもそも遺伝子から作られたわけですので「遺伝資源」の一つです。一方、クスリの分野で最重要の遺伝資源は「漢方薬原料植物」です。
トマトやキュウリは世界中で栽培できますが、薬用植物はそういかず、多くが中国産です。つまり漢方薬は外国の遺伝資源依存であり、将来「漢方薬ショック」が起きてしまう危険性もあるのです。
薬用植物という遺伝資源を日本でどのようにして確保しようとしているかについて紹介します。
クスリと有機化学について
山岸 丈洋 准教授
新しい医薬品の開発は、天然の動植物などから抽出分離された有機化合物あるいは化学的に合成された有機化合物を用い、目的とする作用を持つ分子を選ぶことからスタートします。講義では医薬品の構造と性質に関連付けて、薬学の中の有機化学について説明します。
毒は薬、薬は毒?─毒と薬の関係─
伊藤 鍛 准教授
もともと、自然に存在する“毒”が 現在では“薬”となった例、あるいは“薬”のヒントとなった例が多数あります。毒と薬は切っても切り離せない関係なのです。今回の講演では、間違った使用法をしてしまうと“毒”になる“薬”について、正しい使用法を守ることがいかに大切かを良く知っていただくことを目的とします。薬は正しく用いれば薬となりますが、誤って用いれば毒になるのです。
学習・記憶のメカニズムを探る
関 健二郎 講師
日本政府が、脳研究、特に学習・記憶研究を推進して15年が過ぎました。当時にとって「生命最大の謎」への挑戦であった脳研究は、遺伝子改変マウスの研究を始め、最先端の技術を駆使した素晴らしい成果が世界中から発表されています。この講座は、最先端の学習・記憶研究の成果を基に、これまで解明された学習・記憶のメカニズムを解説します。また空前の脳科学ブームがもたらした弊害等も紹介し、正しい知識の下に脳研究の魅力を知って頂きたいと考えています。
脳が心に伝えること
関 健二郎 講師
心の不調をSOSとして発信する人は少なくありません。特にストレスによるうつ病は、脳神経回路の不調和が原因であり、これは特定の神経伝達物質が特定の領域に負荷を与えて生じます。うつ病の脳内メカニズムは明らかではありませんが、多くの場合で神経細胞死や神経変性を伴わないことから、将来は薬物治療で完治すると考えられています。この講座では、うつ病治療と現存する偏見や問題点を紹介し、精神疾患に対する正しい知識を身に付けて欲しいと考えています。
自律神経活性に対するレニン-アンギオテンシン系の影響
八巻史子 講師
レニン‐アンギオテンシン(RA)系は、生体の血圧調節機構において中心的な役割を果たしている。一方、その過剰な活性化は多くの心血管系疾患(高血圧・動脈硬化・心不全など)の原因となるが、その一部にRA系による交感神経活性化が関与することが知られている。多くの臓器は交感神経と副交感神経による拮抗支配を受けているため、RA系の自律神経活性に対する影響を明らかにすることは、病態の発症機構の解明や治療薬の開発に役に立つと考えられる。
医療に役立つデジタル信号処理
木田 雄一 講師
デジタル信号処理は、センサーで捉えた様々な信号を、情報機器によって処理・加工し、有用な情報を取り出す技術であり、高校数学で習う三角関数、指数関数・対数関数、微分・積分、行列と連立方程式、ベクトル、確立統計などの様々な概念を基礎として発展した技術である。
デジタル信号処理の技術は、実社会の多くの場面で活用されており、医療現場においても重要な役割を担っている。
本講座では、その中から断層撮影(X線CT)などを取り上げ、医療に役立つデジタル信号処理について説明する。
日本語と比べてわかる英語の時制
伊藤 頼位 講師
進行形や完了形など、英語には時を表すさまざまな形式があります。これらの形式は日本語話者が英語を学ぶ際の大きな障壁のひとつです。例えば「私は高校に通っています。」を I'm going to high school. とするのは適切ではありません。本講座では英語と日本語の時制表現を比較することで、時を表す英語のさまざまな形式が持つ意味を理解するとともに、ことばの仕組みを見つめる目を養います。
DNAって何の略?英語でscience
伊藤 頼位 講師
DNAはdeoxyribonucleic acidの頭文字で、リボース(ribose)から酸素(oxygen)原子が1つ減少(de-)した構造のデオキシリボース(deoxyribose)を含む物質です。また塩酸の英語名hydrochloric acidを知れば、それが水素(hydrogen)と塩素(chlorine)からなる酸(acid)であることが理解できます。このようにさまざまな理科用語の英語名を紹介しながら、英語をうまく利用して理科の事項に関する理解を深める方法を紹介します。
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