研究紹介

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薬の副作用発現機序に関する研究および薬剤業務の
リスクマネジメントに関する研究

薬学部 医療薬学分野 中村 郁子 教授

研究テーマ

薬には主作用の他に多くの作用があります。主作用が強く、副作用はできるだけ弱い(できれば無い)薬が望ましいのですが、現実的には困難なことです。本研究室では、薬の副作用に関する研究を多面的に行っていますので、これまで行ってきた研究を含めて紹介します。


1.薬の副作用発現機序に関する研究

-カルシウムチャネル阻害薬ニフェジピンによる血管反応抑制作用の研究-

カルシウムチャネル阻害薬はアドレナリン-α受容体を介したCa2+の血管平滑筋への流入抑制による血管収縮を抑制することにより降圧薬として用いられています。しかしながら、頭痛、発赤、めまい、男性機能不全(インボテンツ)等の副作用を起こす場合があります。これは血管反応に対する抑制作用によるものであり、交感神経、あるいは副交感神経のどちらが主に作用した結果起こるものなのかをニフェジピンおよび種々降圧薬を用いて検計し、ニフェジピンによる副交感神経性血管拡張反応抑制作用は交感神経性血管収縮抑制よる可能性が高いことを示しました。

本研究では、高速液体クロマトグラフィーを用いたニフェジピンの定量法を検討し、血漿成分や光分解産物の影響を受けない、低濃度ニフェジピンの簡便定量法を確立しました。その後、この方法を用いて、同じカルシウムチャネル阻害薬であるアムロジピンの血中濃度と血管拡張反応抑制作用との関連性を検討しましたが、ニフェジピンと異なり、反応と血中濃度の明らかな関連性はみとめられず、これはアムロジピンの長い半減期に関連性があるのではないかと考えました。カルシウムチャネル阻害薬の副作用として歯肉肥厚が知られていますが、中でもニフェジピンによるものが多く、アムロジピンによる報告は少ないと言われています。この点と血中濃度との関連性や、抗がん薬の副作用と血中濃度の関連性等を今後検討していきたいと考えています。


2.調製済抗がん薬の迅速・簡便な確認法の確立および実用化に関する研究

がん化学療法は外来における治療が中心となり、患者来院時の検査結果を基に当日の治療が決定され、注射剤の調製が開始されます。待ち時間をできるだけ短縮するため、短時間での調製をもとめられていますが、抗がん薬の調剤過誤は患者生命に関わる危険性が極めて高いものです。現在、調製後の確認は空の容器や残液によって行う方法のみであり、内容物の直接鑑査は行われていません。本研究は、調製後の抗がん薬混合液から極めて少量(20~100μL)の検体を採取し、HPLCを用いて、迅速・簡便に内容物を確認する方法の確立および実用化を目的としています。臨床で調製する抗がん薬は多種類ありますが、移動相溶媒を変更することなく、複数の抗がん薬を測定できる条件を確立することによって、調製後短時間で内容物の確認が可能になると考えています。


3.感染制御に関する研究

これまで、偏性嫌気性菌であるSelenomonas ruminantiumおよび通性嫌気性菌Streptococcus bovisのイオントランスポートの研究、とくにCa2+トランスポートについて研究を行ってきました。研究開始した当時は、高等生物のCa2+トランスポートの研究が飛躍的に進んだ時代でしたが、細菌の分野では、E.coliの細胞内Ca2+濃度測定の報告があるだけで、嫌気性菌の研究はほとんど行われていませんでした。偏性嫌気性菌であるS.ruminantiumは蛍光色素Fura-2の取り込みが難しく、それを種々の界面活性剤等を用いて取り込ませ、測定法を確立しました。一方、通性嫌気性菌であるS.bovisでは比較的Fura-2の取り込みがよく、細胞内esteraseの作用により容易にFura-2を分解し、細胞内free Ca2+の測定が可能でした。さらにアイソトープを用いてtotal Ca2+濃度やATP変化を測定し、S.bovisのCa2+トランスポートのエネルギー依存性に関して研究しました。本研究の過程において、培地中の陽イオンとくに2価陽イオン濃度が細菌増殖に大きな影響を及ぼすことが明らかになりました。今後はこれまでの成果を踏まえ、この2価陽イオンの効果を消毒薬へ応用するなど、感染制御の面に活かしていきたいと考えています。

教員紹介
中村 郁子 教授