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動脈硬化の大きな原因となる中性脂肪。
細胞・臨床研究で薬剤治療の効果を解明。

薬学部 医療薬学 衛藤 雅昭 教授

研究内容

奥羽大学薬学部疾患薬理・臨床医学(衛藤研究室)の主な研究テーマは以下のとおりです。

  1. 糖尿病、メタボリックシンドロームと高中性脂肪血症
  2. Ⅲ型高脂血症の疫学・成因・病態・薬物治療
  3. 糖尿病性腎症の増悪因子であるアポE2遺伝子・高中性脂肪血症/高レムナント血症と薬剤介入 (フィブラート、スタチン、EPA、エゼチミブ)

1.糖尿病やメタボリックシンドロームで増加する中性脂肪。動脈硬化の大きな原因となる。

日本人の死因の上位を占める動脈硬化症(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞など)は、糖尿病、メタボリックシンドローム患者に発症しやすいことが知られています。

糖尿病、メタボリックシンドローム患者は、高中性脂肪血症を発症しやすく、これが動脈硬化症の大きな原因の1つであることを研究してきました。この高中性脂肪血症の基盤をなすものは、レムナントリポ蛋白(レムナント)の増加です。レムナントは中性脂肪とコレステロールを豊富に有するリポ蛋白であり、変性を受けることなくマクロファージに取り込まれて動脈硬化を惹起します。したがって、高中性脂肪血症/高レムナント血症を治療・管理することが動脈硬化発症予防する意味で重要です。


空腹時中性脂肪値が150mg/dlを超えていれば高中性脂肪血症であり、治療の対象となります。まずライフスタイルの改善(食事療法、適正体重の維持、身体活動の増加)を行います。2型糖尿病患者において2週間の食事療法(主としてエネルギー制限)を行うと空腹時血糖値が31%、中性脂肪値が28%低下することを明らかにしました(2004年)。


食事療法を中心としたライフスタイルの改善を行っても中性脂肪値が150mg/dl以上持続する場合には、積極的に薬物治療を行います。選択薬としてはフィブラート薬とEPA製剤(イコサペント酸エチル)があげられます。糖尿病患者を対象としたFIELD研究では、フェノフィブラート治療は平均中性脂肪値を173mg/dlから130mg/dlに低下させることにより糖尿病患者の動脈硬化症と腎症の進展を抑制すること、したがって中性脂肪低下薬の早期使用が重要であることが明らかにされました。血中LDLコレステロールと中性脂肪/レムナント両方が高値となる複合型高脂血症に対しては、腎機能障害がなければ、スタチン薬(LDLコレステロール低下剤)とフィブラート薬の併用療法も考慮すべきであることを報告しました (2008)。


また、2007年より本邦において使用可能となったエゼチミブ(小腸コレステロール輸送蛋白阻害薬)がLDLコレステロールだけではなくレムナントを約40%も低下させることを見出しましたが (2008)、その臨床応用が今後期待されています。


2.未知の部分が多いⅢ型高脂血症。その本態は高レムナント血症であり、動脈硬化発症と深く関与する。

20年以上にわたってⅢ型高脂血症の研究を行ってきました。


Ⅲ型高脂血症は、中性脂肪、レムナントの催動脈硬化性を証明する代表的な疾患です。アポE2/2遺伝型を基盤として発症し、高中性脂肪血症/高レムナント血症を呈し、冠動脈疾患などの動脈硬化症を早期に発症することを特徴とします。日本人のⅢ型高脂血症においても動脈硬化症を高頻度に発症することを報告しました(2002, 2008)。また、糖尿病を伴うと腎症を発症しやすいことも見出しました(2007)。治療によく反応するので早期診断と早期治療が極めて重要であり、動脈硬化惹起性リポ蛋白であるレムナントを低下させるためフィブラート薬を第一選択します。診断が難しく未知の部分が多い高脂血症といえます。


現在、厚生労働省「原発性高脂血症に関する調査研究」班の一員としてその調査研究を行っています。


3.増加する糖尿病性腎症。アポE2遺伝子がもたらす高中性脂肪血症/高レムナント血症が一部関与することを発見。

糖尿病性腎症の危険因子は高血糖と高血圧といわれていますが、高脂血症とくに高中性脂肪血症/高レムナント血症も関与することを「糖尿病とアポE遺伝子多型に関する研究」により明らかにしてきました(1994, 1995)。アポE2遺伝子とそれがもたらす高中性脂肪血症/高レムナント血症が腎症の増悪因子であることが判明したのです。この発見がアポE遺伝型と糖尿病性腎症に関する研究の世界的発端となったといえます。本研究は研究室の主要テーマであり、科学研究費補助金(文部科学省・日本学術振興会)助成を何度も受けています。



高中性脂肪血症が糖尿病性腎症の増悪因子であることが、日本におけるJDCS研究、英国におけるUKPDS 74研究、豪州におけるFIELD研究においても明らかにされています。腎症進展阻止のために高中性脂肪血症/高レムナント血症を治療することが重要といえます。そのための治療薬として、フィブラート薬(FIELD研究で証明)、EPA製剤、エゼチミブ(レムナントを40%低下)が有力です。研究室では培養腎メサンギウム細胞を用いてこれら薬剤の効果を検討しています。その成果が2009年秋にウィーンで開催される欧州糖尿病学会(EASD)に採択され、服部由香助手(奥羽大学薬学部一期生、今春卒業・助手採用)と寺澤理恵助手(同)が発表する予定です。研究面における本学卒業生の今後の活躍も楽しみです。大学の将来を担う人材育成にも貢献したいと思っています。


今後の研究予定

高中性脂肪血症と動脈硬化症・腎症との関連をさらに明らかにし、薬剤介入によるその予防・治療法を確立し、患者さんの健康維持に貢献したいと思っています。

教員紹介
衛藤 雅昭 教授