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環境中に存在する化学物質の健康影響

薬学部 衛生薬学分野
押尾 茂 教授

研究内容

私たちの周囲には、その生活を維持するために大量の“化学物質”が使用されその他にも多くの環境由来物質に溢れています。それらの健康影響については、ここ20年程を振り返ってみても、ディーゼル排ガス、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)、シックハウス症候群、そして最近ではPM2.5などが大きな社会問題となりました。しかし、その詳細は、不明な部分が多いことも事実です。私たちは、これらの問題にその初期から取り組んでいます。

さて、従来、環境中の化学物質による健康影響調査では、たとえば、気管支喘息などの呼吸器障害(例:四日市ぜん息)や中枢神経障害(例:水俣病)などのように、全ての年齢層の方が被害者となりました(ただし、原因によっては子ども、老人などいわゆる「健康弱者」の被害者が多くなります)。

最近、「生活習慣病胎児期発症説(Developmental Origins of Health and Disease)」と呼ばれる学説が唱えられています。これは、妊娠期や成長期にある種の化学物質等に曝露されると、産まれた子供に表面的な異常(外表奇形)はすぐには認められないものの、彼らが青少年や大人になってから異常が現れるという、観察期間の長く、また、発見が遅くなるというやっかいな問題です。これは、胎児が最大の「健康弱者」であるという考え方につながります。皆様も、低体重で生まれた赤ちゃんで将来成人病のリスクが高まるという記事などをご覧になったことがあると思います。いままでに、胎児期の栄養不良やある種の化学物質に曝露されることで、生まれた後でしかも成人になってから生活習慣病が発症するリスクが高まる可能性が指摘されています。

私たちは、医薬品を含むいろいろな化学物質曝露を実験動物(マウス)の胎仔期(人間の場合は胎児と書きますが、動物ではこれと区別するために胎仔と書くことがあります)に行い、その影響を雄性生殖系と脳神経系への影響を中心として研究を進めています。今までにディーゼル排ガスへの環境中に存在する程度の低用量曝露やPM2.5の本体であるナノ粒子曝露により、生まれた雄が成獣になってから精子形成能が低下することや神経系の発達が障害を受けること、化学物質曝露が性決定機構に影響を及ぼすことなどを報告しています。この研究は、化学物質曝露の健康影響を調査する上で重要で新たなマーカーの発見に結びつく可能性があり、また、不妊症に対する予防あるいは治療の道筋を開く可能性があります。

なお、化学物質の生態影響を検討する目的でミジンコや藻類を用いて、医薬品を含む化学物質の生態系への影響を、形態や遺伝子レベルへの影響を指標とした研究も行っています。

教員紹介
押尾 茂 教授