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漢方製剤の品質管理法に関する研究及び薬剤師業務に関する調査研究

薬学部 医療薬学分野 早坂 正孝 教授

研究内容

上梓されている医薬品はGMP等に則り、厳格な品質管理を行った上で、市場に出回ります。このとき、含有されている成分を指標にして、製品を評価することは品質管理の基本です。また、市場に出回っている医薬品について、医療機関や保健所などの公的機関や大学のような研究機関で客観的に品質を試験しチェックを行うことも重要です。このような観点から、医薬品の品質管理法を探ります。

一方で、医療の進歩は日進月歩で、さらにスピード・アップしているというのが実感です。医療の一翼を担う薬剤師はこのことを理解し対処して行く責務を持っています。そのためには、医療現場の薬剤師の業務や活動を調査し把握する必要があります。

現在、当研究室では、以下に示した2つの研究課題を主に行っています。今回は1の課題について紹介します。

  • 1)漢方薬の品質評価…臨床応用されている漢方薬の成分に着目し、その成分を単離同定するとともに、多様な測定機器を用い定量を試み、漢方薬の品質評価や有効成分の血中濃度測定などに応用する。
  • 2)薬剤師業務に関する調査研究…例えば、病院におけるがん化学療法、感染対策チーム(ICT)や栄養サポートチーム(NST)の具体的な活動あるいは薬剤師の薬物乱用防止の啓発活動への参画などを調査し協力する。

漢方製剤の品質管理法に関する研究

古来より、漢方薬は「傷寒論」や「金匱要略」などの古典にいくつかの剤形(湯、散、丸など)が規定され、その服用法が記載されています。一方、エキス製剤では、各製薬会社が独自の製法で製剤化し、従来の湯液とは剤型が異なっているため、湯液とエキス製剤の品質の同等性に関しては製剤学的な検討が必要です。

そこで、はじめに小柴胡湯湯液の乾燥エキス量、Amberlite XAD-2(*1)樹脂吸着画分(画分A)及び活性炭吸着画分量、通過部を秤量し、漢方製剤と比較しました。その結果、エキス量、画分A量及び通過部量が漢方製剤で少ないことが判明しました。

次に、標準湯液の画分Aを2次元TLCに付したところ(Fig.1)、二十数個のスポットを認め、それらは5つの生薬に帰属され、少なくとも6スポットの成分が確認されました。これらの成分は、liquiritin及びliquiritin apioside(甘草)、saikosaponin a及びc(柴胡)、ginsenoside Rb1及びRg1(人参)でした。また、湯液と漢方製剤で含有成分に違いが認められました。

さらに、生薬甘草中のglycyrrhizin(GL)に着目し、甘草含有漢方製剤中のGLをHPLCで定量した結果(Fig.2)、湯液では1日服用量中甘草1g当り24~30mg、漢方製剤で2.5~15.7mgと漢方製剤で少ないことが判明しました。

このように、エキス量、画分収量による組成比、画分Aの2次元TLCによる使用生薬の確認、生薬成分である指標物質の定量は、漢方製剤の品質評価に有用でした。


*1 Amberlite XAD-2樹脂…比較的脂溶性の高い成分をトラップする不溶性ポリスチレンポリマー樹脂。



モノクローナル抗体を用いた血中グリチルレチン酸とグリチルリチンの高感度測定法(ELISAの確立)

GLは、抗アレルギー、抗炎症作用などの多くの薬理作用を有し、現在、GL含有製剤として広く臨床応用されてます。一方、GL含有製剤を長期に大量投与すると、高血圧症、浮腫や低カリウム血症などの偽アルドステロン症を呈することが知られており、これはGLのアグリコンであるglycyrrhetic acid(GA)のアルドステロン様作用に起因することが報告されています。

そこで、GL及びGAの血中濃度測定を目的とし、GAに対するモノクローナル抗体を作製し、血中GL及びGA量の高感度測定法について検討を加えました。その結果、GAに対して特異性の高いモノクローナル抗体AGA-1を得ることに成功しました(Fig. 3)。次に、本抗体を用い、inhibition ELISA (enzyme linked-immunosorbent assay) を開発し、血中GA 及び GL量のモニタリングに応用しました(Fig. 4)。副作用の発現頻度がGA血中濃度(300ng/mL以上)に相関することから、これらの結果は副作用の防止に役立つと考えられます。





今後の展開

今回は、主に漢方薬の約 7 割に用いられる甘草を取り上げて紹介しましたが、今後も甘草の品質評価を続けるとともに、もう一つの課題として、山形県で栽培され、染料や口紅の原料、生薬としても有名なベニバナに注目し、研究を進めていく予定です。ベニバナは、生薬名をコウカ(紅花)といい、滋血潤腸湯(一般用漢方処方)、治頭瘡一方(医療用漢方処方:59番)、秦ぎょう活湯(一般用漢方処方)、秦ぎょう防風湯(一般用漢方処方)、折衝飲(一般用漢方処方)、通導散(医療用漢方処方:105番)などの漢方処方に配合されており、これらの多くは婦人病薬と見做され、冷え症や血色不良の改善に使う配合薬(婦人病薬)にも処方される要薬です。

奥羽大学が郡山という東北の玄関口近くに位置していることから、身近な故郷(東北)の薬用植物を中心に研究して行く予定です。

教員紹介
早坂 正孝 教授