研究紹介

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安全な小児歯科診療を目指して

歯学部・小児歯科学 島村 和宏 教授

研究内容

奥羽大学歯学部成長発育歯学講座小児歯科学分野で取り組んでいる研究テーマは以下の通りです。

  1. 小児・障がい児の口腔疾患の疫学的研究
  2. 乳歯・幼若永久歯の歯冠修復に関する研究
  3. 歯の発育・萌出並びに顎骨の発育変化に関するエックス線CTによる解析
  4. 味覚の発達に関する基礎的研究
  5. 離乳時期などの違いによる口腔機能の発達に関する基礎的研究
  6. 小児の歯科治療中の呼吸および循環動態の変化に関する研究

今回は、歯科治療を行うにあたって重要な、安全に関わる臨床的テーマ、6.小児の歯科治療中の呼吸・循環動態に関する研究内容の紹介です。


小児歯科学とは、文字通り小児の歯の健康を考える学問領域です。医科であれば小児科と同じように、子どもたちの健康に関わる多くのことを担当しています。口の健康を保つために、病気を治療するために研鑽を積み、診療にあたっています。

齲蝕(虫歯)や外傷、口腔軟組織疾患など、口の中の病気は成人とほぼ同様です。おとなであれば自分の意志で歯科医院を訪れて相談し、治療や予防処置を受けることができますが、子どもたちはどうでしょうか。もちろん、話しを理解してくれて上手に治療を受けてくれる場合もありますが、抱きかかえられていた保護者から離れて治療台に乗るだけでも不安がいっぱいです。何とか逃げようとして泣いたり暴れたりするのも仕方のないことです。


しかしそのような状態では、口の中を診察することもできません。そこで、歯科衛生士さんの協力を得ながら、私達小児歯科医にはもちろん、色々な器具に慣れてもらうためにさまざまなトレーニングを行い、子どもたちの不安や恐怖心を解きほぐす努力をしています。会話が成り立つ年齢の子ども達には、そうした方法もとれるのですが、特に3歳未満のお子さんや恐がりのお子さん、障がいを持ったお子さんにとってはなかなか難しい場合が多いのです。


そんなとき保護者の了承を得て、子どもの体を押さえて(抑制)、診査や治療を行うことがあります。不意に動いたり暴れたりすると、治療台から落ちる危険性もあるため、残念ながら抑制せざるを得ないのです。

体を抑制されているのは、おとなでも苦しいものですが、子どもともなればなおさらです。今まで以上に泣き叫び、逃げ出そうと必死です。そのとき子どもたちの体の中で何が起こっているのでしょうか。そこで、外からではわからない変化をいち早く知り、安全に治療を行っていくために、検査機器が必要になります。





循環動態を計測する上では、小児にとって最も負担の少ない方法が望まれるため、小型のパルスオキシメータを選択しました。図1は人差し指に装置を装着した所です。指先をはさんで包み込むような形をしています。装着しても痛みなどはなく、図2のように発光部からの光を受光部が感知して血液中の酸素の濃度を測定します。

その結果、抑制下での治療中には、抑制していない場合と比較して脈拍数が有意に高くなり、また最高値と最低値の差も大きいことがわかりました。さらに動脈血酸素飽和度(SpO2)は、最高値は変わらないものの、興奮や息をこらえるなどの影響もあって、抑制の場合は有意に低下しました。

つまり、興奮して酸素の消費量は増えるものの、抑制の影響もあって十分に酸素を取り込むことができない状態にあるのです。数%の違いであっても、小さな子どもたちや病気を抱える子どもたちにとっては大きな影響を及ぼす可能性があります。


治療中には、色々な負担が加わることが考えられ、事前の準備と子ども達の様子を常に観察していくことが重要なのです。動物実験においても抑制による身体への影響を検討しており、より安全な治療を目指しています。


今後の研究予定

診療における子どもたちの負担軽減に役立てるために、身体に加わる圧力や時間との関連についても検討したいと思います。


用語解説
【循環動態】 呼吸の様子や血液の流れなど、心臓や肺の働きを意味する。
【SpO2】 動脈を通っている血液中に含まれる酸素濃度を、皮膚の上から計測したもの。

講座紹介
成長発育歯学講座 小児歯科学