研究紹介

HOME > 研究紹介 > 活性酸素とフリーラジカル

活性酸素とフリーラジカル
(目に見えないガスが身体で働いています)

歯学部・口腔組織学 渡邊弘樹 教授

研究内容

フリーラジカル関連酵素の蛋白とmRNAの動態

活性酸素とフリーラジカルのことを簡単に述べます。

人間は生命を維持するため、空気を吸って生活しています。この空気の21%は酸素です。そして酸素を毎日500 Lほど消費しています。ところで身体の中に入った酸素がすべてエネルギーをつくるために使われれば良いのですが、使われなかった酸素は酸化されてしまいます。つまり、数%の使われなかった酸素は、活性酸素や一酸化窒素(NO)などの活性分子種に変えられています。そして、これらはDNAなどの身体の成分と反応して、生理作用だけでなく、病理作用も発揮します。しかしながら、抗酸化防御システムとよばれるものにより巧妙に制御され、病気にはすぐにならないようになっています。正常時にはこれらラジカル(活性酸素やフリーラジカル)は、生命維持のため使われていますが、この防御システムをくぐり抜けたものは、徐々に細胞を傷害し、病気の時には急激に生体を傷害します。蛋白、糖、脂などの酸化障害は、軽度であればこれらを修復し、再生されます。しかし、酸化による組織変性や遺伝子変異は徐々に蓄積し、増加します。

私ぐらいの年齢になると、高脂血症を患っている人が多くなりますが、これは一酸化窒素の(NO)産生や放出の障害を生じ、さらに活性酸素が多く造られていることが理由に挙げられます。つまり酸化障害が徐々に蓄積し、血管内皮細胞に依存した弛緩作用が弱まり、動脈硬化が進みます。さらに、これらのさび付いた酸素は上記の高脂血症だけでなく、糖尿病、肝臓機能障害などの生活習慣病といわれる病気と結びつきます。

酸化を抑える作用つまり「抗酸化作用」は、活性酸素を取り除き、生活習慣病を予防し老化を抑えることになります。ですからこの抗酸化作用を持つ食品を食べると、身体の機能を低下させないですみます。これら活性酸素に対する我々の戦う方法として、Vitamin C, Vitamin Eを摂取することは有効と思われます。また活性酸素を増やす因子として、紫外線、喫煙、車の排ガス、電磁波、環境ホルモン、農薬、殺虫剤、ストレスなど多くのものが知られています。どうかこれらのものを避けて下さい。


一酸化窒素(NO)と活性酸素(O2-)のそれぞれの関連酵素と危険産生物の関係

骨の細胞におけるフリーラジカル関連酵素と細胞骨格蛋白のmRNA動態

私の研究と我々の講座の研究の一部を紹介させて戴きます。

現在まで行ってきた私の研究の主なテーマは、以下のものがあります。

  1. 活性酸素とフリーラジカル関連酵素のmRNA動態:
  2. In situ Hybridization法によるmRNA細胞内局在の研究:
  3. 骨芽細胞、破骨細胞の細胞骨格
  4. 痙攣発作時における海馬苔状線維のシナプス伝達機構

現在生体構造学講座組織学分野の主な研究内容は、1と2です。


1.活性酸素とフリーラジカル関連酵素のmRNA動態:

近年活性酸素やフリーラジカルは、細胞、組織に多大な影響を与えると考えられていますが、口腔組織と骨組織についても、大きな役割を果たしています。そこで活性酸素については、その消去酵素(SOD)や合成酵素(NOX)を目安に、さらにフリーラジカルの一つである一酸化窒素(NO)については、その合成酵素(NOS)を目安に、現在研究を進めています。

実際の方法としては、上記の一酸化窒素合成酵素の遺伝子をノックアウトしたマウスの骨組織や口腔組織において、他種の関連酵素の遺伝子及び蛋白の動態を、In situ Hybridization法及び免疫組織化学により検索し、この部位でのラジカル機構を解明しようとしています。

一方、病的状態下でのラジカル動態を検索するため、大理石骨病マウスを使用し、骨芽細胞や軟骨細胞の活性酸素消去酵素(SOD)や一酸化窒素合成酵素(NOS)、さらには危険産生物peroxyniteriteの動態を、上記形態学的方法と一緒にWestern法においても検索してきました。その結果、大理石骨病において狭められた骨髄腔に存在する骨芽細胞は、フリーラジカルをガス環境維持の為に発生していることや、NOSノックアウトマウス骨芽細胞で、i,e-NOSの増加と共に、活性酸素合成酵素(Nox)や消去酵素も大きく変動することがわかってきました。


骨をつくる細胞(osteoblast)において、ある遺伝子をノックアウトすると活性酸素関連酵素のmRNAが強く発現する(in situ hybridization法による)。


エナメル質をつくる細胞(ameloblast)においても、ある遺伝子をノックアウトすると活性酸素関連酵素のmRNAが発現する(in situ hybridization法による)。


歯肉においても一酸化窒素関連酵素の遺伝子が発現する(in situ hybridization法による)。

2.In situ Hybridization法によるmRNA細胞内局在の研究:

従来mRNAは、核周囲のリボソームへ運ばれて蛋白合成、そして細胞各部へ運ばれると考えられてきました。最近蛋白種の異なるmRNAは、輸送信号配列が組み込まれ、運ばれる先のリボソームが異なり、翻訳に有利な場所で細胞内局在をすると報告されました。そこで我々は、この輸送信号配列を組み込んだ3’UTR probeを使用しin situ hybridization法及びNorthan法で検索すると、大理石骨病骨芽細胞では、β及びγ-actin mRNA局在機構が働かずdiffuseになることがわかりました。さらにレスキュー実験をすると、少なくともβ-actin mRNA局在機構はもとに回復することがわかりました。これらの細胞内での遺伝子輸送システムは大変興味深い内容であり、教室での研究に結びつけたいと思っています。


大理石骨病マウスの骨芽細胞では細胞骨格のmRNAが局在しなくなるが、病気を治すと元にもどるmRNAがある(Int Dev Biol 44, 201-207)。


輸送信号配列を組み込んだプローブを使うと、細胞内のmRNAの局在がわかる(in situ hybridization法による骨芽細胞におけるactin mRNAの局在:J Cell Sci 111, 1287-1292)。

今後の研究予定

現在まで、一酸化窒素合成酵素遺伝子のノックアウトマウスや大理石骨病マウスの骨、軟骨を中心にラジカル変動を追ってきたが、今後は活性酸素合成酵素遺伝子をノックアウトまたはノックダウンしたマウスやラジカルに関連する疾患動物における骨や口腔内組織について検討したい。

なお現在、歯牙発生上のリンパ管を同定し、その特徴を把握するための形態学的研究も行っています。

講座紹介
生体構造学講座 口腔組織学